新型コロナウイルス感染症の拡大が収まらない中、“ウィズコロナ”のエンターテイメントとして、「ドライブインシアター」が再び注目を集めている。ソーシャルディスタンスを保ちながら映画を楽しむことができるからだ。
ドライブインシアターとは、娯楽大国アメリカで始まった駐車場に巨大スクリーンを設置して映画を楽しむイベント。「車」という完全なプライベード空間で、映画を鑑賞しながら飲食や会話も自由に楽しめるエンターテイメントだ。
そんな中、武蔵村山市にある大型商業施設「イオンモールむさし村山」で、2020年12月24日と25日のクリスマスに、新海誠監督の大ヒット作『君の名は。』と『天気の子』のドライブインシアターが上映された。
今回は、25日に開催された『天気の子』の上映会に行ってみることにした。
チケットは「イオンシネマ」ドライブインシアターの公式ページで購入
2021年8月15日変更:以前、ドライブインシアターのチケットの購入は、チケット購入サイト「e+(イープラス)」で購入可能だったが、「イオンシネマ」公式サイトからの購入変更された。
チケットの購入方法は、「イオンシネマ」ドライブインシアターの公式ホームページを開く。
ここで注意なのが、ページ上部のバナーに配置してある「チケット購入」ボタンを押してはいけない。このボタンからは、屋内のイオンシネマのチケットしか購入できないからだ。
「会場を探す」ボタンを押すと「会場案内」の場所に飛ぶ。
行きたい会場の情報から「詳細を見る」ボタンを押す。
映画の詳細情報がポップアップで表示される。左下にある「チケットを購入する」ボタンを押せば、ドライブインシアターのチケットが購入できる。
鑑賞料金には、2人分のポップコーン(袋入り)とドリンク(ペットボトル)が付いている。料金は作品や会場によって異なるが、今回鑑賞する『天気の子』の場合、1台につき3,000円(税込)だった。
鑑賞人数は乗車定員以内なら何人でもOKなので、大勢で行くとさらにお得になる。ただし、ペットの同伴は不可(盲導犬の同伴は可)、観賞場所の予約ができない点に注意が必要だ。
会場は臨時駐車場
開場は17時00分、上映は18時30分。「あまり早く行っても寒いかな?」と思い、今回は開場30分前の18時00分に到着した。
会場はイオンモールむさし村山(武蔵村山病院前)の臨時駐車場。当初、イオンモールの店舗内の駐車場だと勘違いしてしまい、ウロウロして迷ってしまったが、巨大スクリーンを目印に無事に到着した。
駐車場入り口でスタッフの方にチケットを見せた後、コロナ対策のため検温を実施。いくら車内だからとはいえ、風邪を引いたら参加はNGだ。
検温が終わると助手席側の窓から、ビニール袋に入ったキャラメルポップコーンとペットボトルのお茶2本、除菌ウェットシート入りの袋を受け取る。
ポップコーンは、映画館のように箱入りのものを想像していただけに、映画館と同じようなワクワクする演出でないのはちょっと残念ポイント。普通のポップコーンを食べたい人は、事前にイオンで購入するのが吉だ。
10mほど進み、次のスタッフの方から鑑賞時の注意事項が記載された用紙を受け取る。さらに進むと、鑑賞場所に車を停車するよう指示を受ける。
すでに前に2列、約10台ずつ停車しており、こいたま編集部の搭乗した車は3列目に。1列目と2列目はさほど間隔は広くないのだが、2列目には車高が高いミニバンが並べられたため、3列目はかなり後方への配置となった。
しかし、停車位置はスクリーン正面で、角度は抜群に良いポジション。これが車列の端側に停車となれば、1、2列目でもかなりスクリーンが見えづらくなるだろう。
音声は車載のFMラジオ機能で聴取する。周波数は入り口で手渡された用紙に記入されているので、事前に合わせ、案内の音声が聞こえるか調整をしておこう。
トイレはイオンモールの中にしかなく、往復するだけでも15分はかかる。お手洗いは上映前に済ませておかないと、映画の内容を追えなくなるので注意だ。
会場内はおよそ50台が集結。スタッフの方に聞くと「今回はコロナの影響からか、まだ少ないほうだね」と話していた。
スクリーンは空気で膨らませるタイプのようだ。巨大なビニールプールを立てたような形状をしていて、ロープで四方から引っ張る形で支えていた。
こちらがプロジェクターの設置場所。足元に発電機が確認できる。3列目付近からスクリーンを照らしていた。プロジェクターからスクリーンまでは当然外気を通るので、雨や雪が降れば光が遮られて上映は難しくなる。夏場など虫の多い時期には上映できないのでは?とも思った。
上映中の注意事項
ドライブインシアターでは、上映中はイベント終了まで、移動や駐車位置の変更はできない。新型コロナウイルス感染症対策のため、車外に出る時はマスク着用が原則だ。
映画館の中のように、携帯電話やおしゃべりの禁止はない。もちろん車内では飲食も会話も自由。運転手でなければ飲酒もOKだ。トイレは遠いので、飲み過ぎないようにしよう。
上映中はアイドリングストップが推奨されているものの、カーラジオを付けている状態なので、バッテリーあがりが心配な人はエンジンをかけざるを得ない。カーエアコンもつければ快適だが、冬場は毛布を1枚用意すると良いかもしれない。エアコンをつけなければそのぶんクリアに音声を楽しむことができる。
また、今回のイベントでも散見されたがヘッドライトをつけっぱなしにしている車があった。両隣前後の車に迷惑がかかるので、ヘッドライトやブレーキランプが点灯していないかどうかはよく確かめよう。また、上映中は室内灯の使用は控えるようにしたほうが吉だ。
当然のごとく、映画の撮影・録音はNG。ドライブレコーダーや車載カメラを搭載している車は、配布したステッカーを貼るように指示される。
車内は自由のためスマホを開きたくなるだろうが、スマホの光が窓ガラスを通じて他人の映画鑑賞を邪魔する可能性も。楽しく鑑賞するためにも、マナーは守りたい。
車内で何かあった場合、スタッフにはハザードランプを点灯することで緊急事態を伝えることができ、すぐに駆けつけてくれる仕組になっている。
上映中の感想
3列目だと確かに映像は遠い。映画というより大きなテレビを見ているかのようだ。映画館では人の頭が邪魔になることが多いが、今回は車が並んで鑑賞しているという、なんとも言えない光景が広がっていた。
写真で見ると「外は明るいし、車は視界に入るし、なんだかなぁ」と思われるかもしれない。しかし、3列目でも前の車はほとんど邪魔にはならなかった。電車で文庫本を立ち読みするのと同じで、周囲に景色が広がっていても、集中すると目の前にあるモノしか視界に入らなくなるのが人間の脳の仕組みらしい。
座席をリクライニングし、寝そべって見てみいたが、映画の内容はちゃんと頭に入ってきた。
いざ上映がスタートし、スピーカーから音声が流れてくると、まるで映画館の中にいるかのような錯覚を覚えた。スピーカーの音量や音質が映画への没入感を左右してしまうのは否めない。
「この場所、どこかで見たことあるよね?」
「ここは新大久保かな?」
映画館では絶対できない会話が、車内では小声ではなく普通に会話できる。これがめちゃくちゃ気楽で楽しい。
周りの目線を気にすることなく、ポップコーン以外にも、持参した食べ物やお菓子を楽しみながら視聴することができる。
ホームシアターとは違い、車内という密閉空間の中で家族や仲間たちと楽しめるのは不思議な体験だった。映画館は暗すぎて他人の顔の表情などわからない。他人を想像することもしない。
だが、ドライブインシアターは違う。スクリーンを取り囲む車の中には、それぞれの家族や友達やカップルや一人で見に来たお客さんがいる。そのことを想像しながら見る映画。その場に大きな一体感が生まれているような気がした。
音量を上げるのも自由。下げるのも自由。自分で映画館を作り上げている感じがする。
こいたま編集部は『天気の子』を1度見ていたからこそ車内で会話を繰り広げていたが、もし初めて見る人と同乗するのであれば、不用意な会話には注意が必要だ。
会話のルールについては、あらかじめ同乗者同士で決めておいた方がいいだろう。
ドライブインシアターはクセになる楽しさ!
上映終了後、なんとも言えぬ高揚感が残った。映画館ではエンドロールが終わると室内が明るくなり、現実に引き戻されてしまう。
しかし、ドライブインシアターは野外の暗さがそのまま残り、余韻を残したまま会場を後にできる。映画を見ていたシートに座ったまま帰宅するという、なんとも言えぬアトラクション気分を味わえるのだ。
ドライブインシアターの利点は、コロナ禍の中でも久しぶりに家族や友人とリアルなイベントを体験できることだろう。子連れファミリーには、子どもが騒ぐ心配をせずに楽しめるという利点もある。
上映する映画も最新の映画ではなく、誰もが見たことがある映画がふさわしいと思った。集中して観るというよりも、みんなで会話をしながらワイワイ盛り上がるのが、この上映方式にふさわしいと感じたからだ。
車内というプライベート空間で見ることがこんなにも楽しいものとは思いもしなかったが、癖になりそうな楽しさがある。
上映後はイオンで買い物するのもよいが、現実に引き戻されたくなければ先に買い物を済ませておいて、そのまま夜のドライブに行くのも一興だ。
これからもしばらくはコロナ対策として外出自粛は続くだろう。「自粛生活」へのちょっとした刺激として、皆さんも取り入れてみてはいかがだろうか?